【出版ゼミ14】自費出版に見られる特徴
自費出版といっても呼び名はそれぞれ(共同出版、企画出版)で、なおかつ契約内容もバラバラです。本来は市販されない場合がほとんどでしたが、現在では流通できるものが多くなってきています。何のために自費出版したいのかを良く考えて依頼先を決めることです。その上で以下のポイントに注意してください。
(自費出版物にみられる特徴)
①ISBNコードが付与されていない(2段バーコードがついていない)
→このコードが付いてないと一般の書店には流通できません。
②一般書店(ネット書店含む)に置いていない(知人・縁故者のみに配布)
→出版社が取次と契約を結んでいなかったり、あるいは書店と直接契約をしてない場合は書店店頭にはならびません。あと、現在、出版不況のあおりを受け、発売と同時に全国の書店に並ぶということは、ほんの一握りのベストセラー作家のものを除いてありません。自費出版でなくても、初版は3千部程度に減少しており、出版社が取次や書店に事前営業をかけることで書店から注文を受け、それを目安に新刊の配本数がきまります。中には1000冊も撒いてくれない場合もあり、自費出版ならなおさらその傾向が強いです。店頭の棚も限られているので、売れそうもなく、宣伝も予定されてないような本は置くだけ無駄と考え、たとえ送られてきても箱から出さずにそのまま返品なんてケースは日常茶飯事です。
ですから、もし、多くの店舗に並ぶと明記されている場合はその根拠を確認する必要があります。多くの本屋に自動的に本が並ぶことは決してありません。なお、出版社が本を店頭に無理やり並べる方法として棚借りというのがあります。これは本屋にお金を払って一部の棚を借りあげるものになりますが、棚のサイズは決まっており、いつまでも置いてくれるとは限りません。
③書店の特定の棚に置かれている
→自費出版会社には、特定の書店と契約して一部の棚を確保し、そこに自社発行の書籍を陳列しているところもあります。ただ、ユーザーはわざわざその棚を見に行きません。市販本同様、書店のコーナーに設置されてはじめて必要な人の目に留まります。
④厚めのコピー用紙(白)を使用
→用紙についての説明が書かれていない場合は要注意です。用紙サンプルなどがもらえるか確認してみましょう。市販本で広く使われているのは、クリームキンマリ、バルキーなど書籍用紙になります。他方、コピー用紙に代表されるような上質紙とは、原料に古紙を使わずにパルプだけで作られた印刷・情報用紙のすべてを指します。
書籍用紙は、本文専用の用紙です。紙質は上質紙に近いですが、文字を見やすくするために上品な染色または加工が施されています。腰が弱く、やわらかな紙面となっています。
⑤オフセット印刷でない場合、インクが光っていたり滲んでいたりする
→印刷方式にはいくつか種類があります。それぞれ仕上がりに差があるので確認が必要です。市販本では通常オフセット印刷を利用しています。他方、小ロットに対応したプリントデマンドというデジタル印刷があります。最近では、オフセットに迫る高品質な印刷も可能になってきましたが、 オフセット印刷とは印刷方式が根本的に異なります。
どこがオフセット印刷と違うのか、そのことによるいくつかのデメリットを記載しますので、 デジタル印刷についてよくご理解ください。
・印刷後に起こる「用紙の波打ち」
・折や曲げ部に起こる「トナーの剥がれ」
・トナー方式による「インクのテカり」
・トナー方式による「インクの盛り感」
・本文印刷時の黒ベタ絵柄の掠れと白抜け
⑥カバーがない、帯がない、スリップがない
→市販前提であればスリップが必ず必要となります。そうでないと、書店からのバックオーダー(リピート注文)が得られません。また、市販本としての風格を出すにはカバー&帯が有効です。
⑦デザインが陳腐(売れる視点の欠落、レイアウト・色使い)
→テンプレートから選ぶのは価格が安くてもやめるべきです。また、安い場合は、社内の営業マンがデザインソフトで作成する場合もあります。実績はもちろん、専任デザイナーの有無は最低限確認しましょう。また、プロと言っても、お任せの場合、どうしても傾向が出てしまいます。納得いくデザインにするためには、著者自身もサンプルを提示することが必要です。イメージは言葉では伝わりません。そうでないと修正作業に時間がかかり、納期が遅くなります。
⑧フォントがパソコンの基本フォント
→フォントによって印象がガラッと変わります。単行本や文芸書はほぼ似たフォントですが、ビジネス書などではいろいろなフォントが使われています。どのようなフォントが使用可能か聞いてみましょう。自費出版の場合、その点が軽視されていることがあります。モリサワ、ヒラギノなど市販本でよく使われているフォントを標準使用できるかどうか確認してみてください。
⑨厚みがなく冊子レベル
→厚みが出ないと背表紙に文字が入れられない場合があります。棚に差し込まれたらそれこそ何の本かわかりません。ページ数が少ない場合は、貧弱にならないよう背厚が出るように用紙の厚みを変更して対応するのですが、そのようなことが可能かどうか確認しましょう。
⑩本文レイアウトが雑(ワープロの基本の設定)
→いちばん印象に影響する部分です。本文の版面サンプルを要求しましょう。レイアウト字間や行間、のど・小口・天地の余白、柱やノンブルの位置、本文・見出し・小見出しなどのメリハリなど、ワープロソフトではできない微妙な調整を行ているかどうかで、印象がガラリと変わります。
⑪頁構成が適当(章ごとのページ数のバラつき、構成の未熟)
→これは原稿作成時の注意点ですが、章ごとのページ数があまりにばらついていると素人くさくなります。申込前の事前原稿チェックにおいて、全体の構成をチェック&アドバイスしてもらってください。どうしても生じてしまう無用の余白などは、コラムや挿絵の挿入で対応するといいでしょう。しっかりした作品を作る気持ちがあれば、出版社もこの辺の相談には乗ってくれるはずです。
⑫目次、章立てのテキストが陳腐(売れる視点の欠落)
→これも原稿作成時の注意点ですが、申込前の事前原稿チェックにおいて、章タイトルや各種見出しのテキストについてもアドバイスしてもらいましょう。購入に直結する要素です。
タイトル、サブタイ、帯キャッチについても同様です。内容を魅力的に伝え、思わず読みたくなるかどうかの視点で考えてください。
⑬文字ばかり(読み手の視点欠如)
→図版・イラストの作成などのオプションがあるか確認しましょう。内容を分かりやすく伝えることも重要です。それにより口コミが働いたり、レビューの評価が高くなります。分かりにくい内容はそれだけ不利です。そのためのフォローとして、内容の図案化やイラストでの解説などが有効です。
⑭内容紹介、著者プロフィールが適当
→これは著者の役割ですが、意外にないがしろにされる部分です。しかし、書店への事前注文書や出版情報サイト、ネット書店の販売ページに掲載される大切な情報であり、購入に直結する要素にもなります。
⑮出版社のロゴマークがない
→意外に印象に残るポイントだと思います。多くの出版社ではロゴを使用しています。企業は何千万もかけれCIロゴを作りますが、書籍においても同様にアイデンティティを表すものとしてのロゴの有無によって微妙に信用具合が変わってきます。
⑯在庫切れが出る
→予め在庫が切れたときの対応や費用を確認しておきましょう。売り切れ表示がでているとせっかくの販売チャンスを逃してしまいます。在庫が途切れないように増刷をかけるのはもちろん、在庫を抱えずに半永久的に販売継続ができるプリントオンデマンドへの移行なども検討しましょう。
⑰定価が高い
→プリントオンデマンドでの自費出版の場合、最低販売価格が決められている場合があります。また、小ロットでのプリントオンデマンド印刷は印刷料金が割高になり、販売価格も高く設定しがちになります。オフセット印刷では基本料金は高めですが、その分部数の増減による費用の増減は低く抑えられます。
⑱広告や販促に対応していない
→売るためには必須です。これにきちんと対応せず、高い印税を提示している場合は要注意です。店頭で目についた書籍を買う人もいますが、多くは別の媒体で知った本を目的買いします。また、別の媒体で見て記憶には残っていても店頭で目につかなければあきらめて帰ってしまう人も多いでしょう。なので、新聞広告や書店販促は有効です。平積みされていれば、そこで初めて知った人の購入率も高くなります。ネットではキーワード検索に引っかかることが重要なので、タイトルやサブタイも工夫します。
ここで新聞広告の裏事情についても紹介します。
新聞業界と広告代理店、出版社の関係には特殊なものがあります。そもそも新聞第1面の書籍広告枠は純粋な広告枠ではなく、新聞社にとっては情報枠であるという認識、読者に提供する記事の一種になります。また、今では広告料金も下がっていますが、昔は高かった。かつて取引した金額の履歴に、今の料金が影響を受けるということです。
具体的には歴史のある大手出版社でかつて一度でも出稿しているとその金額は高いということです。これは空枠でも同じです。なので、始めから低い料金で始める新興出版社が有利なのです。