
タクシーは夜10時から朝の5時までの7時間、深夜料金となります。夜10時になると料金メーターのタイマーが鳴って、メーターに「深夜料金」の電子文字が表示されます。深夜料金は乗車料金が2割増しです。初乗り710円は変わりませんが、メーターが通常より20%速くカウントされます。
僕の平日の営業パターンだと、深夜料金に切り替わるのがちょうど休憩中で、仮眠をとっていて目覚めると、すでに深夜料金になっているのに気が付きます。それを確認すると、「さあ、稼ぎ時の深夜帯になったぞ、頑張ろう!」と気持ちが高ぶり、お気に入りのエナジードリンクを一気に飲み干し、気合を入れて深夜営業に臨んでいました。
この時間帯に勝負をかける運転手はたいてい赤坂、銀座の飲食店のお客さんを狙います。というのも品が良くて長距離を出してくれるお客さんが多いからです。逆に新宿、渋谷などの繁華街には入りません。若くて品がないお客さんが多く、1回の走行距離も短いケースが多いからです。
でも、僕はあえてその新宿、渋谷に入っていました。というのも不景気が続く中で、赤坂や銀座はお客さんの絶対数が減っていて、まして平日なら、お客さんを捕まえるのが至難の業だったからです。1時間探してやっと見つけたお客さんが1メーターだったりすると、けっこう精神的なダメージを受けます。そして、そのネガティブな心境はその後の仕事のリズムにも悪影響を及ぼすのです。新宿、渋谷のお客さんは、距離は短いですが、人数は他の場所より確実に多いので、僕はそっちで数を稼いでいました。 僕の営業ポリシーは、昼も夜間もなく、とにかく多くのお客さんを回すことでした。1乗務の21時間で50組乗せるのをノルマにしていたのです。これをこなせば、長距離のお客さんに出会わなくても確実に高アベレージで営収を維持できます。ちなみに一般的な運転手は1乗務で30組前後です。

