
行政が決めている「タクシー運転手1乗務における実労時間18時間、走行距離365キロ以内(東京地区)」という規制は、法人タクシー運転手の大台乗せ(一乗務で営収10万円超え)を非常に困難にしています。それでも大台を目指すなら、時間と走行距離の両方のロスを減らす、つまり空車で走る時間を極力少なくするのが絶対条件です。
僕はタクシー運転手になってから、最初の2年間で4回大台を経験しています。通常、大台に達したときの明細には必ず4~5万円の長距離乗車が入っています。逆に言うとそれがあって初めて大台を狙えるのです。僕のような短距離乗車を主体とする運転手が4回も大台に乗せているのはかなりのレアケースでしょう。
そのうちの1つを紹介します。その日は土曜だったので、出庫するとまず歌舞伎町に向かいました。ところが、その日の歌舞伎町はほとんどお客さんが見当たりません。でも朝9時半ごろに流れが変わり、ホストのお客さんを笹塚まで送り、その後甲州街道を歌舞伎町に戻る途中の幡ヶ谷で上石神井(運賃4,500円)のお客さんを拾いました。降ろした後また歌舞伎町に戻り、1メーターのお客さんをこまめに乗せましたが、その後はなかなか数字が伸びません。なので、歌舞伎町は昼前で見切りをつけ、青山方面に向かいました。そこで六本木ヒルズまでのお客さんを乗せて送り終えたとき、六本木に住む友人からグッドタイミングで電話が入り、銀座まで乗せました。次は聖路加タワーのところでつけ待ちです。ここで築地までのお客さんを1組乗せた後、昼休憩。休憩明けは場所を芝公園に移して、そこで恵比寿までのお客さんを拾いました。降ろすとすぐにお客さんが乗ってきて高輪まで。高輪で今度は五反田までのお客さんを乗せました。五反田では大田区久が原までのお客さんを乗せ、久が原から五反田へ戻る途中の南馬込で、旗の台までのお客さんを拾いました。完全に流れがつながっている感じです。途中、五反田のガスステーションで燃料補給を済ませ、夕方の時間帯は広尾に移動。そこでも、広尾から赤坂、その先の六本木から渋谷、渋谷から下馬と、どんどんつながっていきます。下馬では裏路地を走っていたにもかかわらず、八雲までのお客さんを乗せ、八雲から駒沢通りを走るなか、渋谷行きのお客さんを拾いました。戻りたい方面に行こうとすると、ちょうどそこに向かいたいお客さんとめぐり合う感じです。でもこの時点ではまだ「今日は調子いいかも」程度の手ごたえに過ぎませんでした。
夜9時、僕は深夜営業に備えて休憩を取ろうと自分のマンションがある麻布十番にクルマを回しました。すると麻布十番商店街の飲食店前でお客さんが手をあげていました。なんと浦安まででした。麻布十番から浦安までは深夜料金で7710円。ここまでで合計営収5万3千円になったのです。その後休憩をはさみ、夜11時過ぎに新橋まで戻ってくると、すぐに新宿行きのお客さんが乗ってきました。ちょうど新宿に向かうところだったのでラッキーです。新宿まで2420円の稼ぎです。歌舞伎町に入ると代々木までの短距離を乗せ、降ろして歌舞伎町に引き返すと今度は池袋まで1970円のお客さんが待っていました。再び歌舞伎町に戻ると大田区池上までの上客と遭遇。しかもお客さんの要望で高速利用の9550円獲得です。
その後は渋谷にクルマを回しましたが、そこでもさらに絶好調。渋谷から池上、渋谷から駒澤大学、渋谷から六本木という連続乗車です。そのあとにまた渋谷に戻ると、スクランブル交差点の近くで話し込んでいる若者4人組を見つけました。その横で止まってドアを開けると案の定乗ってきて、蒲田経由の横浜みなとみらい、だということです。心の中でガッツポーズが出ました。金額は1万3680円。もう少しで合計営収9万円に達します。時間もまだ深夜1時前。これから2時間は勝負可能です。走行距離の上限があるので、節約のため高速を使わず、第3京浜から渋谷に向かうと、途中の池尻大橋で目黒行きのお客さんをピックアップ。その後渋谷に戻り、今度は六本木まで。六本木では、テレビ朝日のタクシーチケットを持ったお客さんが乗り込んできました。ただ、行先は近場の広尾でした。「今日はこの辺で終わりかな」と諦めかけながら広尾周辺を走っていると、ここにきて最後に「埼玉みずほ台行き」のお客さんにめぐり合いました。料金1万2620円です。締めてこの日の営収は10万2060円。めでたく大台達成となりました!

