
タクシーがお客さんを獲得するのは、主に「流し」「つけ待ち」「無線配車」の3つです。「流し」は空車表示を出して道路を巡回すること、「つけ待ち」は特定の場所に横付けして、お客が来るのを待ちます。駅や空港、デパートやホテルのタクシー乗り場に止めるのも「つけ待ち」です。「無線配車」は会社から無線を受けて指定された場所へ車を回すことですが、お客さんのいる場所から最も近い空車車両をコンピュータが割り出して呼び出されるので他力本願です。なので、ほとんどは「流し」と「つけ待ち」を組み合わせる形で乗務をこなしていきます。
僕は仕事を始めた当初から「つけ待ち」を得意としていましたが、これは10代のころから遊び歩いていて、遊び人たちが街中でタクシーを止める場所をよく知っていたからです。運転手になってから見つけた場所を含め、都内で50か所ほどを把握しています(その後100か所ぐらいに増えました)。基本的にそれらのポイントを行き来する形で動き、そのコース上にいる「流し」のお客さんも拾っていきます。その結果、特に深夜や土日の日中で好成績をあげていました。
苦戦したのは平日の昼間。夜遊びばかりしていた僕は、ビジネスマンたちの傾向がわからなかったのです。当初、土地勘があった西新宿のオフィス街を中心に動いてみましたが、高層ビルから新宿駅西口地下への1メーター(=当時710円)のお客さんがたまに乗るくらいで、さっぱり成績があがりませんでした。タクシー運転手になって1か月目ごろから、西新宿に見切りをつけ、丸の内方面のビジネス街に拠点を変えたところ一気に成績が伸びました。1日の営収(※営収の60%前後が運転手の歩合報酬となります)が7000円ほど上がったのですが、支払いの際に渡すレシートへのお客さんの反応から、その理由がわかりました。西新宿はベンチャー企業が多く、勢いがあっても従業員が経費として使える額は少ないようです。自腹なのか、レシートの受け取りに無頓着な人が多かったです。急ぎの時だけ仕方なく利用していたという感じ。一方、丸の内は一流企業がたくさん入居しています。レシートを要求されないことはまずありません。すべて経費で落ちるからです。だからでしょう、お客さんも初乗り1メーターの壁を気にすることなく、普通に1000円前後まで支払いが伸びます。この数百円の差が1日でいうと7000円の差になるのであなどれません。

